iPS細胞:遺伝病治療に道 自然修復細胞を選択−−京大再生医研・マウス実験
京都大再生医科学研究所の多田高(たかし)准教授(幹細胞生物学)らは、遺伝病
のマウスから作った人工多能性幹細胞(iPS細胞)から、遺伝異常が自然に修復さ
れた細胞だけを選別し、正常なマウスを誕生させることに成功した。再生医療を遺伝
病の治療に利用する道を開く可能性がある。米国のオンライン科学誌に10日掲載さ
れた。
iPS細胞はあらゆる臓器になる能力を持ち、移植用臓器を患者自身の細胞から作
ることで拒絶反応をなくすなど、再生医療の切り札と期待されている。だが、DNA
情報は元のまま残るため、遺伝病への応用には壁があった。
研究グループは、細胞が分裂する際に、傷ついたDNAが修復する性質があること
に着目。多発性嚢胞腎(のうほうじん)という遺伝病と関連する遺伝子に異常を持つ
マウスからiPS細胞を作り、それを約1万個に増えるまで培養。全細胞を調べたと
ころ、うち1個の細胞でDNA配列が正常に修復されていた。
このiPS細胞を正常なマウスの受精卵に注入してマウスを誕生させたところ、腎
臓は正常だった。【榊原雅晴】
毎日新聞 2012年2月10日 東京夕刊