●奈良県立奈良病院に勤務する産科医の当直勤務は違法な時間外労働に当
たるうえ、割増賃金も支払っていないとして、奈良労働基準監督署が、
同病院を運営する県を労働基準法違反容疑で書類送検していたことがわ
かった。
捜査関係者らによると、同病院では、産科医らが当直中に分娩や緊急
手術など通常業務を行っているが、病院は労基法上は時間外労働に相当
するのに割増賃金を支払っていなかったうえ、同法36条に基づき、
労使間で時間外労働や休日労働などを取り決める「36協定」も結ばず、
法定労働時間を超えて勤務させた疑い。
読売新聞 7月9日
●北海道夕張市は1日、財政破綻後に市立病院から公設民営化した市立診
療所が5月、心肺停止だった男性の救急搬送受け入れを断っていたこと
を明らかにした。男性は別の診療所に運ばれ、死亡が確認された。
藤倉肇市長は同日、記者会見で「誠に遺憾」と話した。
時事通信 6月1日
__________
佐々木の視点・考え方
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
★6月に北海道夕張市の病院が「救急患者を断った」として批難ごうごう
の報道がされた。救急病院が患者を断るのは言語道断と言う訳だ。
この病院は夕張市の破綻にともない40億円の負債を抱えて破綻した後、
再建プランを持った医師が引き継ぎ、市からの財政援助無しに復活した。
しかし、過疎地域で十分な収益とはならずに、この4月からは常勤の
医師は一人になった。
このため、平日は毎晩当直で、満足に寝られるのはアルバイトが来て
くれる週末だけで、始終睡眠不足になっている。
こんな状況で救急受け入れが出来るわけもないから、救急は出来ないと
市長に言うも、断られる。
救急医療の受け入れをするには最低でも7人の医師が必要で、採算が悪
いため年間3億円は余分にかかってしまう。
その人員追加もお金も全く出さずに、「救急をやれ」の一言。
この結果、救急患者の依頼が来たが、その症状と緊急性から、他の施設
と人員の整った救急施設に搬送した方が良いと判断して断ったのだが、
記事のようにマスコミと市から批難された。
もし受け入れて不幸な予後になったとしたら、今度は警察とマスコミが
徹底的に弾圧することになる。
夕張市の事例は、救急のみならず病院の多くの科で抱える共通の問題。
人員の不備を医師の睡眠不足の強制で賄おうとするのが現状。
病院勤務医の多くが「タコ部屋」以下の環境にある。
奈良県の事例は、病院勤務医を人間と認めた珍しいケース。
これで、県の首長が有罪となれば多少は改善されるのではないか。
これが全国に広がることを願う。
ただ、夕張の事例に当てはめると、この医師は開業医と同じで経営者に
当たるので労働基準法で救済される事はない。
尚、夕張は、タコ部屋の元祖である「樺戸集治監」に近い場所だ。